大企業が積極的にスタートアップの商品・サービスを使ってくれるようになれば、日本のスタートアップ市場は一気に変わる。
プログラムの後半では、サプライズゲスト、世耕弘成経済産業大臣が登場。決定されたばかりの「J-Startup」のロゴをオーディエンスに披露した。沸く会場に向かって、自身も並々ならぬ思いをこのプロジェクトに込めている旨を語った。
世耕大臣と松本氏が、6月に施行されたばかりの「規制のサンドボックス制度」について率直に意見を交換する場面もあった。同制度はイノベーティブな新事業に挑む企業を後押しするべく、届け出に応じて、参加者や期間を限定した実証実験を行うことを可能にし、実証で得られたデータを根拠に規制改革を目指す制度だ。
それに関して話題にのぼったのは、近年の物流業界で課題となっている「ラストワンマイル」。最寄りの配送センターから、顧客が実際に荷物を受け取る場所までの、運送経路の「最後の区間=ラストワンマイル」を、配送業者ではなく、時間の空いた学生や主婦が担えるかたちがつくれれば、より早く快適な配送サービスが実現できるのではないか……。その実現に向けて「規制のサンドボックス制度」が後押しになるのではないかと、世耕大臣と松本氏がダイレクトに意見を交換し合った。
こうして官民が率直に意見を交わす場もまた、世界で戦えるビジネスを育てるために重要なものである。その後も松本氏から、次のような「スタートアップの支援」をめぐる要望が語られた。
松本:いま、国からのサポートがあれば日本のスタートアップが大きく変わるだろうな、と思うことがひとつあります。スタートアップは大企業とのコラボレーションってすごくやりたいんですが、それ以上に、大企業にサービスを使ってほしいんです。
シリコンバレーのすごいところは、設立して半年の会社がつくったサービスでも、ものさえよければIBMやマイクロソフトといった大企業が迷わず採用するところ。大企業がスタートアップの商品やサービスを使ってくれるシステムづくりを国に進めていただけたら、日本のスタートアップ市場は一気に変わると思います。
梅澤:大企業だけでなく、ぜひ政府も使ってみてほしいですね。政府が使って「大丈夫だね」となれば、大企業も安心して使うことができますから。
世耕:私も、あるスタートアップが経産省の入札に参加したときの経験談として、本当に大変だったと聞いたことがあります。電子入札手続きのためにまずは法人登録が必要になるのですが、システムが洗練されていないので、理由も提示されないままエラーとなって先に進めなかったり……(苦笑)。こうした問題は、ぜひ改善していきたいと思っています。
また今回の「J-Startup」でも、サポーターの大企業に単なる出資や投資をしていただくだけでなく、スタートアップのサービスや商品を使うというかたちでの協力もやっていただけるようにしたいと思います。
立場の違いを越えて語り合う場こそが、世界を目指すビジネスの原動力に
オーディエンスからは「日本のスタートアップへの海外からの投資が少ないという問題を、どう考えるか」という質問も寄せられた。
世耕大臣は「そもそもは、日本に投資対象となるスタートアップが少なかったという環境がありました。これはだいぶ変わってきていると思いますが、まだ情報発信が追いついていない。政府がスタートアップをどんな方法でサポートしていこうとしているのか、また日本でどんなスタートアップが育ち始めているのか、あるいは海外の企業が日本でパートナーを組むとしたらどんな相手がいるのか、などの情報発信は、これから頑張ってやっていきたいと思っています」と、直後に控えているというシリコンバレー訪問も含めて、積極的なレスポンスをおくっていた。
まとめとして山川氏が『J-Startup Hour』に寄せて、「われわれが壇上で喋っているのを聞くだけじゃなく、参加ができる、手を挙げて聞きたいことが聞けるコミュニティーをつくりたい」と語った。これは『J-Startup Hour』に限らない話であり、立場の違いを越え、腹を割って語り合う場こそが、日本から世界へとグローバルな展開を目指すビジネスの原動力になっていくことだろう。
最後に山川氏の音頭で、会場のみんなで叫んだ「Action trumps everything!(行動こそがなによりも勝る:とにかくやってみよう!)」。スタートアップはもちろんのこと、未来を考えるすべてのビジネスパーソンへの鼓舞といえよう。