INTERVIEW
スポーツを通じて社会を豊かにしたい。急成長企業ドームが提案するスポーツ産業化・文化醸成とは?
三沢英生(株式会社ドーム 取締役兼執行役員)

INFORMATION

2017.07.07

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慣習にとらわれず、ディマンドを創造し、社会を豊かにしたい

HIP:ドームが会社として、大学スポーツ改革などに取り組まれているのは、どのようなモチベーションがあるのでしょうか?

三沢:安田がテーピングビジネスで創業以来アスリートの悩みを解決することで急激な成長を続けているのがドームです。創業後5年くらいしてから、安田が定義したドームとはスポーツソリューションプロバイダー、つまりお客様の悩みを解決する企業でした。アスリートの悩みを解決することがドームの根源的な存在価値であり、成長の源泉です。そして、その行動原則はグローバルスタンダード。たとえば1996年の設立当時、日本のスポーツ業界では複雑な流通によって、テーピングがアメリカの数倍の価格になっているという問題がありました。

これをドームは中間業者を通さない流通形態を確立することによって、約3分の1の価格で提供し、多くのスポーツ選手にテーピングを普及させることを実現しました。つまり必要であれば、過去の慣習にとらわれず、マーケットを自分たちでつくってしまおうという発想があるんです。

HIP:体育会系の文化があるスポーツ業界で、古い慣習を打破していくようなビジネスを貫くのは大変ではなかったですか。

三沢:そもそも体育会系とは実力主義なんです。ドームでは日本企業に古くから根付く年功序列などの慣習を排除し、徹底した合理主義と、何かあっても自分たちで仕事を完結するための自前主義を貫いています。自前の物流センターを運営していたり、広告関係のクリエイターを全員社内で抱えていたりします。また、ドームが目指すべきビジョンについても日々、社員同士がフラットな関係のうえで徹底的にコミュニケーションを取っています。

一つひとつのプロジェクトが、日本のスポーツ文化醸成にどう紐づくのかを徹底的に考えたうえで仕事をスタートさせる。ときには非効率ではないかと思うほど時間がかかる仕事もありますが、最終的にはそれが一番合理的であると信じています。

日本のスポーツ業界を活性化させるためには、ドラスティックな改革が必要です。そのために、一見遠回りに見えたとしても、大きなビジョンを共有して仕事に取り組むことが大切なんです。物流に携わる人間も、営業も、クリエイターも、財務も人事も、みんなビジョンを共有した上で日々の業務にあたる。財務でも、単に数字を計算するのと、ビジョンを念頭に置いた上で数字に向き合うのでは、全く仕事の質が変わってくるはずです。

店頭でアンダーアーマー製品を売るスタッフも、この一枚のTシャツを販売することがスポーツ産業化に繋がるんだと意識しながら業務に取り組んでほしいですし、クリエイターも、自分がこんなにカッコイイものをつくったら日本のスポーツカルチャーが変わっちゃうんじゃないかとワクワクしながら仕事にあたってほしい。そのためにも働く人間にとっての初期設定にあたるビジョンの共有には、これでもかというほど議論するんです。

ドーム本社に併設されている「ドームアスリートハウス」。プロスポーツ選手に並んで、三沢氏もトレーニングを行なっているという

良いビジョン、良いプロダクト、良いプロジェクト。それを提示し、それを実行できれば、人は自然と巻き込まれてくれるものだと思います。

HIP:社内でも、議論を活発化させるためにフラットな雰囲気づくりを行なっているのですね。ほかにもスポーツ業界で同じような取り組みをされている組織はあるのでしょうか。

三沢:帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督から「体育会系イノベーション」のお話を伺ったことがあり、強く印象に残っています。監督は「1年生に余計な雑用をさせるな、4年生が率先してやれ」と指導しているそうです。すると、チーム内の雰囲気が柔軟になり、1年生からフレッシュな提案やアイデアがどんどん出てくるようになる。これはなるほど、と思いました。

ドームもスポーツ関連企業なので、どうしても社内で昔ながらの体育会にありがちな空気が生まれがちです。だからこそ体育会系イノベーション、つまりドームでは「フラットな関係づくり」に注力し、平等に意見を集約しています。個々の意見を尊重するからこそ、組織のうえで一人ひとりのパワーが最大限に発揮されるのです。

HIP:ビジネスを通して、これからの日本のスポーツ業界を変革していくにあたって、意識していることはありますか?

三沢:グローバルスタンダードで物事を見てみれば、スポーツ産業において日本は完全に遅れています。だから世界基準の目標を定め、この現状を打破していきたい。

そのためには、良いビジョン、良いプロダクト、良いプロジェクト、そしてそれを提示し、実行できれば、人は自然と巻き込まれてくれるものだと思います。また「フラットな関係」のパワーというのは、社内に限ったことではありません。周りのステークホルダーの方々とも議論しやすい関係を築き、ビジョンを共有していくことが大切です。

果てしなく遠い道のりだとしても、目標に向かって真っ直ぐに進んでいくことが合理的だと信じて、スポーツ業界、ひいては日本全体に、「スポーツを通じて社会を豊かにする」という意識が広がっていけば必ず社会は変革されます。

Profile

プロフィール

三沢英生(株式会社ドーム 取締役兼執行役員)

1973年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券、メリルリンチ日本証券を経て、2013年、スポーツ産業に圧倒的なポテンシャルを感じ、株式会社ドームに参画。今年東大フットボール監督に就任し、チームはもとより、大学の改革にも尽力している。

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