元マジシャンの異色プロデューサー・安藤晃弘が語る、VRで「脳を騙す」テクニック
安藤晃弘(株式会社ハシラス 代表)
2016.11.07

VRを使えば、現実の7割くらいの体験を1万分の1の投資で実現可能。

HIP:先ほど体験させてもらったブランコ型のVRアトラクション「アーバンコースター」は、ほとんど物理的なモーションがないにも関わらず、空中を疾走する感覚にすっかり騙されました(笑)。池袋のサンシャイン60の展望台「スカイサーカス」にもあるそうですね。

安藤:ブランコは動いてないのに、自ら勝手に動いて叫んでいましたよ(笑)。「スカイサーカス」では、人間大砲型のマシンに乗り込み、未来の東京の名所をフライトできる「TOKYO弾丸フライト」などのアトラクションも電通さま・乃村工藝社さまと共同で制作させていただいています。

「アーバンコースター」

HIP:こういったアトラクションでの体験を現実のように感じさせるために、どのような点を工夫しているのでしょうか?

安藤:たとえば、「TOKYO弾丸フライト」について話をしましょう。人に「飛んでいる」と錯覚させるのに重要なのは、ハプティクス(触覚を通じて情報を伝達する技術)を使った刺激です。もし人間がそのまま空を飛んだら、体に触れるものは何もなく、全身で風を切る感覚があるはずですよね。それを完全再現するのは難しい。そこで、「半分にカットした砲弾にうつ伏せで乗り込んで飛ばされて行く」という方法を採用することで、体の前面に触れている感覚があるのが自然な状況になります。皮膚感覚の刺激とVRでの感覚を100%一致させることができ、没入感をかなり高めることができます。

HIP:乗り込むボートはそのままでも、VRコンテンツを変えるだけで別のアトラクションとして楽しめそうです。

安藤:そうなんです。私たちはハウステンボスに、複数人で乗馬レースができる「Hashilus」というVRアトラクションも設置しています。これはハプティック(振動や動き、触覚などで情報を伝達すること)な観点から言えば、牛でもラクダでもドラゴンでもいい。馬を別の何かに変えるだけで、まったく違うアトラクションにできるんです。応用可能な機器を作れば、外部の造形を変えるだけで新しいアミューズメントを生むことができる。ここがVRの独自性の高さであり、私たちが注目している点です。

「Hashilus」

HIP:本物と比べて場所を取らないのも大きなメリットですね。

安藤:おっしゃる通りです。ジェットコースターを作ろうとすると、まず広い敷地が必要ですし、安全点検や保守費用などのランニングコストがかかります。しかし、VRなら土地も安全点検も必要ない。同じ体験とまでは言わないまでも、7割ぐらいの体験を1万分の1の投資で実現可能です。どこへでも運べるし、現場に合わせてアレンジすることもできる。まさに動く遊園地です。私たちはこれを「VRキャラバン」と呼んで展開しています。

いずれにしろ、周りが見えないヘッドマウントディスプレイは頭打ちになるでしょう。

HIP:現在、ハシラスはVRアトラクションのようなエンターテイメントの分野に強みを持っているかと思います。今後はどのような展開をお考えですか?

安藤:VRアトラクションのエキスパートとして確たる強みを作っていくことは一つの目標ですね。それ以外にも、家庭用や、医療・福祉を含めた産業用デバイスへの参入も考えています。たとえば、VRを通して、介護施設に入居している家族と一緒に食事をとることもできるかもしれない。こういったアイデアも実現していきたいですね。

HIP:最後に、VRの未来についてどのように考えているかを教えてください。

安藤:現在のVRはヘッドマウントディスプレイを装着するのが主流ですが、必ずしもこれが最適だとは思っていません。ケーブルでつながれている状態で外界をシャットアウトするのは、いろんな点で不便が多い。いずれにしろ、周りが見えないヘッドマウントディスプレイは頭打ちになると思います。たとえば、Kinect(ジェスチャー・音声認識によって操作できるデバイス)などを活用すれば、何も装着せずにコンテンツを楽しめるVR空間を作ることも可能です。このように、より装着感を無視できる仕組みが整ったら、VRで得ることができる体験も、私たちのアイデアの幅も広がっていくでしょう。

Profile

プロフィール

安藤晃弘(株式会社ハシラス 代表)

株式会社ハシラス代表。元手妻師で現在はVRプロデューサー。2014年からVRアトラクションを制作し、2015年12月に起業、Tokyo VR Startups 第1期インキュベーションプログラムに参加。動物に乗った移動によるコンテンツ「Hashilus」や車両・戦車など車輪走行移動コンテンツ「四季の世界遺産ドライブ」、実写空間の自由移動コンテンツ「座間味ロケットジャンプ」など、10種類を超えるハードウェア筐体込みのVRアトラクションをプロデュースする。

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