INTERVIEW
多様な「おじさん」がイノベーションを創出。セブン銀行の取り組みに迫る
山本健一(株式会社セブン銀行 常務執行役員人事部長兼総務部長 / セブン・ラボサポーター) / 長沢淳博(株式会社セブン銀行 セブン・ラボ次長)

INFORMATION

2018.08.20

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イノベーションのロールモデルを見せて社員を刺激。積極性を引き出していった

HIP:セブン・ラボでは、どのようなオープンイノベーションに取り組んできたのでしょうか。

山本:シリコンバレーに本社を置く日本のベンチャーキャピタルWiLや、国内最大級のスタートアップコミュニティーCrewwとはセブン・ラボの設立前から交流があったのですが、彼らにはすごく助けてもらっています。

起業家教育に特化したバブソン大学で「失敗学」を研究する山川恭弘教授や、クラウドファンディング「Makuake」の中山亮太郎社長、遠隔健康医療相談サービス「小児科オンライン」を運営するKids Publicの橋本直也社長、定額制のバッグレンタルサービス「ラクサス」の児玉昇司社長など、イノベーティブな取り組みをされている人やスタートアップ企業などにお願いし、わざわざ社内に来ていただき講演してもらって、社員への刺激や交流が生まれるようなセミナーも開催しました。

いつしか社員も積極的になり、スタートアップイベントや企業そのものを直接参加したり訪ねたりするようになりましたね。実際にCrewwが提供しているオープンイノベーションプログラム「crewwコラボ」にも参加して、スタートアップと協業での新事業開発にも取り組みました。

イノベーターによる講演会の様子

HIP:実際にセブン銀行とスタートアップの協業で生まれた取り組みにはどのようなものがありますか。

長沢:お客さまサービス部から、「チャットボットによる案内を導入したい」と相談を受けたときは、人工知能のスタートアップであるStudio Ousiaを紹介しました。その後は直接の担当者同士で話が進んでいき、結果としてStudio Ousiaのディープラーニング技術による質問応答システム「QA ENGINE」が採用されました。試行段階を経て、セブン銀行ではチャットボットのサービスを実現することができました。

その他にも、勤怠管理、給与計算システムを提供するドレミングとの協業で、企業が給与を即日振り込むことをサポートする「リアルタイム振込サービス」を2017年11月にローンチしました。

イラスト・漫画制作会社のフーモアとの協業で生まれた、アニメの男性キャラクターがATMを利用案内する「セブンコンシェルジュ」というサービスも、この夏に試験運用を開始する予定です。スタートアップと協業することで、新たな事業やサービスをより速く、よりよくつくり出すことが可能になっていると考えています。

セブン・ラボの働き方はまるで「アメーバ」。境界やかたちを決めず、柔軟にプロジェクトに関わっていく。

HIP:こういったプロジェクトに、セブン・ラボのメンバーはどのように関わっていくのでしょうか。

長沢:決まったルールはありません。「リアルタイム振込サービス」は、私がもともと新規サービス開発の部署に在籍していたこともあり、セブン・ラボ自体がプロジェクトを受け持って、私が中心になって進めました。

いっぽうで「セブンコンシェルジュ」は、2017年の「crewwコラボ」でフーモアが提案した「イケメンコンテンツによる女性顧客の新規獲得および継続利用促進」という案をセブン・ラボが採用し、アニメや声優に詳しい若手の女性社員3人を巻き込んで進めました。

最初は、お手伝いとして入ってもらいましたが、最終的には3人がプロジェクトを率先して引っ張ってくれたので、結果として、セブン・ラボは予算を確保したり、経営陣へのプレゼンをアドバイスしたり、決裁をとるために稟議書を書いたりと、サポートに回りました。アメーバのようにかたちを変えながら、その時々で最適な関わり方をしています。

若手女性社員3人が中心になって進めた「セブンコンシェルジュ」。イケメン男性キャラクターがATM取引を案内してくれる

長沢:ちなみに、セブン・ラボの設立前に始めたアイデアソンは、社員から新しいサービスや事業のアイデアを募る「社内事業創造チャレンジ」というプロジェクトに名前を変えて、いまも継続しています。

また、社外での他流試合にも挑戦しており、野村総合研究所が主宰する「NRI ハッカソン」では、社内の関係部で結成したチームをサポートし、審査員特別賞もいただきました。これらの取り組みにより、新規事業を立ち上げるためのアイデアのまとめ方や、チームでの動き方、アクションの起こし方などのノウハウが、着実に社内に蓄積されているのを実感しています。

野村総合研究所が主宰する『NRI ハッカソン』へ参加したときの様子

HIP:「従来の銀行の考え方にとらわれないブルーオーシャンを見つける」ことも、セブン・ラボのミッションでしたね。

山本:誰も知らない新しいマーケットを見つけることは当然ながら難しい。そこで専門的な研究をしている学者の知見と自由な発想をする若者を組み合わせることで、新たな市場発掘のヒントが得られるのではないかと考えています。

これまで、慶應義塾大学や立命館大学、首都大学東京、津田塾大学、大阪大学など5つの大学と、産学連携をテーマにしたプロジェクトに取り組んでいます。それぞれの研究やプロジェクトには、セブン銀行だけでなく、グループのセブン‐イレブン・ジャパンやお取引先のALSOKさまなど他企業も一緒に参加していただいています。大学が持つ専門的知識と、学生たちの自由なアイデア、それに企業のリソースやアセット、課題が組み合わさることで、新たな価値創造ができると考えています。現在、首都大学東京との共同研究は実証実験の準備中です。

イノベーションを起こせる社員と、起こせない社員。その「見分け方」とは?

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