INTERVIEW
「見たくない未来を見よう」 既存のビジネスと常識を超える、オープンイノベーションの考え方。
一橋大学イノベーション研究センター教授 米倉誠一郎

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2015.07.28

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データ分析で「必要なものを必要なだけ作ることができる世界」へ

近年では、サッカーの試合でもデータ分析を用いているという。データを集めて解析することで、なでしこジャパンは世界の強豪と戦ってきたのだ。さらに、データ分析はより身近なところで活用されようとしている。最近、広く知られるようになった「IoT(Internet of things)」は、これまでインターネットに接続していなかったものをインターネットにつなげることで、データを取得し、効率よく管理しようとするアプローチだ。

米倉氏「冷蔵庫や電球がインターネットにつながったら、どれが動いていて、どれが動いていないのかがわかる。そうしたら、動いていないものは止めておくことができるようになります。つまり、キャパシティを上げ続けるのではなく、ピークをコントロールするアプローチが生まれます。これは、家の中の電力コントロールだけでなく、モノづくり全体にも言えること。色々なところからデータを集めることが可能になり、そのデータを分析することで、必要なものを必要なだけ作る。そういう世界が初めて実現しようとしています。」

既存ビジネスの延長線上で考える人には「見たくない、見えない未来」

IoTの事例の一つとして、米倉氏はGoogleの自動運転車の存在を挙げた。米倉氏によれば、自動運転の利点は、安全とエネルギーだという。

米倉氏「自動運転が可能になると、都市の渋滞が3割解消されると言われています。また、交通事故も起こらなくなる。事故が起こらなくなるとしたら、現在の自動車に必要とされている強度は要らなくなるかもしれない。そうして軽量化が可能になれば、動かすのに必要なエンジンも変わり、燃費も極端に改善される。自動運転車の利点が見えてくると、地下鉄を整備するよりも、自動車を自動運転にするほうがいいですよね。そうしたら、地下鉄整備にかかる何千億円のお金を教育やインフラに投資できる。これは既存のビジネスの延長線上で考える人には『見たくない、見えない未来』の一つです。」

オープンイノベーションが可能にするスピーディな商品開発

こうした新たなテクノロジーの台頭により、ビジネスのあり方も変わろうとしている。現代は、自社だけでなく外部にある知識や技術を活用しながら新たな価値を生み出す「オープンイノベーション」の時代であると米倉氏は語る。ある経済学者の論文を紹介しながら、オープンイノベーションに着目すべき理由を説明した。

米倉氏「ロナルド・コースというノーベル経済学賞を受賞している経済学者が、1937年になぜ組織は大きくなるのかということについて記した『The Nature of the Firm』という論文を発表しました。論文の中で彼は、組織が大きくなる理由は、内部管理コストと外部管理コストの差で決まると説明しています。内部でやった方が安いときに会社は大きくなって、外部でやった方が安いときに会社は小さくなるということです。現代では、情報コストをふくめて、外部取引コストが激減しています。情報をいかにうまく獲得して、商品開発するかが非常に重要な時代なのです。」

オープンイノベーションの利点は、内部に蓄積されている知識よりもはるかに豊かな外部にある知識を活用できること、そして、外部リソースをうまく活用することで企業がスピードを上げられることだ。

失敗するかどうかは、市場に出してみないとわからない

米倉氏は「オープンイノベーションにはスピードが大切だ」と話す。試行錯誤しているうちに、次々と新しい製品が市場へと投入されていくので、より早く顧客に届ける必要がある。さらに、開発期間が短くなれば開発コストも削減され、その分商品を安くすることができる。

米倉氏「開発中の商品が失敗するかどうかは、市場に出してみないとわかりません。プロトタイプのまま一刻も早く市場に出して、顧客と一緒に考えながら商品を作り上げていく。そういうアプローチで商品を開発しないと、今の時代の速度には間に合わない。」

オープンイノベーションの考え方やスピードを重視する考え方は、HIPにおいても重視されている。米倉氏は、HIPというプラットフォームの価値についても言及した。

米倉氏「外部の知識は内部の知識よりはるかに豊かです。HIPのような場所ができたことで、新しい人と出会い、新しいものが生まれていく機会が生まれたことはよいことです。 壮大な無駄のように見えるかもしれませんが、やらないよりやったほうがいい。みんなで学んでいくためには、失敗を恐れずどんどん発言するようにしましょう。間違っていたとしても、質問することでみんなの学びにつながります。」

積極的に発言しながら、オープンに学んでいく。「こういうのがまさにHIPなスタイルです。」

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