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海運業から飲食業へ。事業革新の中で舵を切った男が語る、組織作りに必要なこと
株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元 巳智雄
2016.06.27

たかが雇われ、されど雇われ。私みたいな社長がいるから、社員も成長意欲を持てるのかもしれません。

HIP:秋元さんは2002年に取締役、2012年には代表取締役に就任されています。役職の変化と同時に、ご自身の志や心境にも変化はありましたか?

秋元:そうですね。取締役になってからは、意識のスイッチを完全に入れ替えました。それに合わせてライフスタイルも変えたくらいでしたね。もともと飲食業への転換を進めていましたが、2000年に社名を富士汽船からワンダーテーブルに変更し、名実共に飲食の会社に生まれ変わった。2002年から社長の林(当時)と私の新体制で新たなスタートを切るということで、経営者として会社をもっと引っ張らないといけないと思うようになったんです。

HIP:これまで、店舗経営の経験は十分にあったと思いますが、やはり意識は大きく変わったと。

秋元:店舗経営と企業経営はまったく違うものなんですよね。営業部長だった頃は毎日の店舗売上やプロデュースのことを考えていましたが、企業経営では、この先5年10年、会社をどう引っ張っていくかの計画を作り、それを実践していく必要がある。店舗経営のノウハウとはレイヤーが違うんですよね。2002年に取締役になったとき、「次は社長になる」という意識を持っていたので、飲食業界における「プロの経営者」として自分を磨き上げたいと思ったんです。というのも、他の業界と比べ飲食業界にはプロの経営者が少ないんですよ。

HIP:「プロの経営者」とは、どういう経営者のことでしょうか?

秋元:飲食業界は、創業オーナーの圧倒的なセンスとパワーで急成長を遂げる企業か、もしくは3代4代と続くファミリー企業が多いんです。でも、そこで働く社員の中には、チャンスを与えればもっと会社を良くできるポテンシャルを持った人がいるかもしれない。そういう人が育つ風土を作ることは、これからの外食産業を面白くするためにも必要だと思うんです。

HIP:企業として人を成長させる風土を作ることができるのが、プロの経営者だということですね。

秋元:そうですね。いまの私を見て、この会社の創業者だと思う人がいっぱいいますけど、実は雇われ社長ですからね(笑)。でも、たかが雇われ、されど雇われという思いはあります。私みたいな社長がいるから、社員も成長意欲を持てるんじゃないかなと。弊社の社員は、誰もが頑張れば部長にも取締役にも社長にもなれますから。

いま私は、将来的に誰かがワンダーテーブルの社長になったときの仕組みを作っているのだと思います。

HIP:これまでの話をお伺いして、「人」を大切に仕事をされてきている印象がありますが、ご自身としても人材育成は一つのキーワードになっているのでしょうか?

秋元:そうですね。人材育成は、「どういう人を採るか」「どう教えていくか」が大事ですが、特に入口がとても重要だと考えています。弊社では「ホスピタリティ」をキーワードにしていて、採用では知識や技術より「ホスピタリティの種」を持っているかどうかに重点を置いているんです。そのポイントを「か・し・こ・い」と呼んでいて、「か」は感謝、「し」は親切、「こ」は好奇心、「い」は飲食が好き――この4つを持った人はワンダーテーブルという会社に合う人なので、ここを見極めるようにしていますね。そして、もう一つは「フィロソフィー経営」を大切にしています。

HIP:「フィロソフィー経営」とは、どういうものなのでしょうか?

秋元:ワンダーテーブルという会社が、どういう人たちの集まりで、どういうことを目指し、どういう生き方をすべきか、「ミッション」「ビジョン」「バリューズ」という、3つの軸からなる哲学を全スタッフで共有するようにしているんです。より具体的にその考え方を伝えるために、半年に一度、全社員と面談を行う「トップ面談」を10年以上続けたり、毎週「トップメッセージ」を全社員と全アルバイトに向けて送っています。

HIP:経営トップと直に接する機会があることで、社員のみなさんも会社に対する愛着が生まれますよね。

秋元:そうだと思います。社長が好きかどうかというより、会社を好きになってもらいたいんですよ。そのために社長が何をしなければいけないかといえば、全スタッフとの接点を持つこと。その積み重ねしかないんですよね。

HIP:それもプロ経営者に必要な要素の一つであると。

秋元:そうです。いま私は、将来的に誰かがワンダーテーブルの社長になったときの仕組みを作っているのだと思います。経営者を育てることも大事な仕事の一つですから。

HIP:そうした長期的な経営設計に対し、現在ワンダーテーブルでは2020年までに国内外合わせて10か国・150店舗を達成という目標を掲げられています。これらを踏まえた今後のビジョンを教えてください。

秋元:数字はあくまでついてくるものなので、達成するための努力はしていきますが、数字にこだわるあまり、無理してお店を作るということは一番やってはいけないことだと思っているんです。私たちのビジョンは「卓越したブランドとホスピタリティで、世界のお客さまを魅了できる企業になる」ということ。クオリティとサービスの向上が何より大切です。その想いを胸に、2020年に向かって進んでいきたいと思っています。

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