BMWが日本のスタートアップと協業を推進。海外から見た日本企業の強さは?
ルッツ・ロートハルト(ビー・エム・ダブリュー株式会社) / ファリザ・アビドヴァ(Trusted株式会社)
2022.11.30

自前主義からオープンイノベーションへ。日本の大企業はなぜ変わり始めたのか?

HIP:ファリザさんは前回のインタビュー(2021年3月)で、「日本の大企業には、本気でオープンイノベーションやスタートアップとの協業に取り組む意識がまだ醸成されていない」ことを指摘されていました。あれからおよそ1年半が経ちましたが、何か変化は見られるでしょうか?

ファリザ:じつは、この半年ほどで風向きが大きく変わってきたことを実感しています。これまではスタートアップとの協業やオープンイノベーションに消極的で、自前でやることにこだわる大企業が多かったのですが、最近は前向きに「こういう分野でスタートアップとコラボレーションしたい。ただ、やり方がわからないので協力してほしい」という問い合わせがとても増えています。

しかも、それがただのポーズではなく、しっかりとチームに予算と権限を渡し、本気で取り組もうとしているケースが増えているんです。

HIP:風向きが変わった要因を、どのように分析されていますか?

ファリザ:以前は、そもそもオープンイノベーションやスタートアップに対する大企業の理解が足りていなかったように思います。しかし、「CIC Tokyo」をはじめとするさまざまなスタートアップの集積拠点だったり、エコシステムだったりができたこと、そこから多くの情報が発信されることで、一気に理解が深まったのではないでしょうか。また、イベントなどでオープンイノベーション事例などを目の当たりにする機会も増え、「自分たちにもできるのではないか」という意識が広がっているように思います。

HIP:現時点で、具体的な協業の動きはありますか?

ファリザ:まだ何らかの成果が出たわけではありませんが、具体的なアクションはいくつか生まれています。たとえば、とある大企業から「こんなプロジェクトをやりたいが、人材も含めて社内だけではリソースが足りない」という相談を受け、CICを含めたエコシステムのなかにいる優秀な専門家を集めました。大企業からは技術に明るい担当者に出向いただき、一つのチームとしてプロジェクトを実施する準備を進めています。こういう事例が、この半年でかなり増えましたね。

HIP:これまでの消極的な姿勢が嘘のように、一気に動き出していますね。

ファリザ:これは私が日本で18年間暮らして感じることですが、日本の人はとても慎重で、新しいことを始めるにしてもまずはしっかりとリサーチを行ない、不安を解消しようとします。そのため時間はかかりますが、いざ実施するとなればとてつもないスピードでことが進んでいく。予算も人もどんどん集まってくる印象があります。

この半年で日本の大企業のマインドセットが明らかに変わってきていることを考えると、これから日本と海外の大企業の協業もどんどん増えていくかもしれません。

ルッツ:そうした動きは、われわれとしても大歓迎です。日本にはスタートアップに限らず、革新的な技術を持った企業が数多くあります。たとえば、大企業のなかにも、まだ表に出ていない隠れたイノベーションの種がたくさん眠っている。

そうした企業にアクセスすることができれば、スタートアップにはない宝のような技術やアイデアに出会えるかもしれません。ですから、スタートアップのスカウティングと並行して、中小企業、大企業にも広くコンタクトしていきたいと考えています。

日本とドイツを比較して見える、意識改革より大切なこととは?

HIP:大企業であれば新規事業に不安や怯えといった感情を抱く人もいると思います。この点で、BMWという大企業にいらっしゃるルッツさんは、どのように踏み出すべきだと思いますか?

ルッツ:日本には、「失敗は成功の元」という言葉がありますよね。たしかに個々人レベルでは失敗を恐れる場合もあるでしょうが、日本社会が失敗に不寛容かというと決してそうではないと思います。われわれはドイツの会社ですが、ドイツにも失敗に寛容な人もいれば怒る人もいますし(笑)、これは日本でも同じはずです。

また、ドイツも日本も同じ敗戦国という立場から約80年のあいだ、変化し進化してきました。今後も人のマインドは変化し続けるでしょうし、変化があれば失敗、あるいは新しい取り組みへの恐れや怯えはそれほど高くなくなるかもしれません。おっしゃられた課題は、時代やジェネレーションとも関係してくる問題だと考えます。

HIP:つまり、これからの時代はマインドセットの変化が求められるということですね。

ルッツ:いえ、無理にマインドセットを変える必要はありませんし、マインドセットを変化させるのはかなり難しいことです。時代の変化に合わせて個人も変化していけばよいと思いますし、むしろいま持っているマインドセットのよい部分を大切にするのも必要ではないでしょうか。

これもまた日本とドイツの比較になりますが、私が日本の人と話していると、とくにクオリティーの部分で共感することが多く、同じ言語感覚で話していても問題ないと感じています。先ほど申し上げたようにBMW自体、クオリティーを大切にする会社であり、またドイツという国全体もその傾向が強いといえます。

そして、日本にも同様の人が多いから、同じ感覚で話していても意思疎通が図れる。大企業の新規事業にしてもスタートアップにしても、元から根づいているよい意識を大切にしていけば、面白いもの、人を惹きつけられるものが、新たにつくられるはずです。

HIP:では、最後にあらためて日本の企業に向けたメッセージをいただけますか?

ルッツ:BMW Startup Garageでは、とにかくさまざまな企業、より多くの人たちとつながりたいと考えています。協業というかたちに結びつかなかったとしても、話をするなかでお互いに新しい発見が生まれるかもしれません。

少しでも興味をもっていただけるスタートアップの方にはぜひ、BMW Startup Garageのピッチコンテストにエントリーしていただきたいですし、大企業の方にも気軽に話をしにいらしていただきたいですね。美味しいコーヒーを用意してお待ちしています。

ファリザ: ヨーロッパの魅力は、異なる国々が互いのアイデンティティを尊重し合いながらも、共通の社会課題に対して、国境、企業の壁を超えてスピーディーにコラボレーションし、取り組む点だと思っています。

そして、Trustedには日々現地ヨーロッパからサスティナビリティを中心とした社会課題に対する興味深い、新たなコラボレーションの取組み事例が多く集まってくるのです。こういったヨーロッパのリアルな情報やケーススタディを日企業の新たな取組みやチャレンジのきっかけに貢献できるよう、もっと多くの方々にお伝えすることが私たちのミッションでもあります。

いずれは日本の皆様をヨーロッパのエコシステムに実際にご案内し、多くのキープレイヤーと繋がっていただきたいと思っています。まずはCICで気軽な情報交換にお越しください。お待ちしています。

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プロフィール

ルッツ・ロートハルト(ビー・エム・ダブリュー株式会社 デベロップメント・ジャパン本部長)

1991年、ミュンヘン工科大学卒業。1995年、ビー・エム・ダブリューに入社。以後、ドイツと日本で研究開発関連の管理職を歴任。

ファリザ・アビドヴァ(Trusted株式会社 代表取締役)

ウズベキスタンのサマルカンド国立外語大学の在学中に日本の文部科学省の奨学生として神戸大学に留学。人材開発会社を起業した後、2016年にTrusted設立。

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