目指すは日本のジェフ・ベゾス。映像解析ベンチャー代表が語る、世界基準のプラットフォーム戦略
鳥海哲史氏 (株式会社フューチャースタンダード 代表取締役)
2017.08.01

2017年3月に開催されたHIP主催のビジネスコンテンスト『ベンチャードラフト会議in虎ノ門ヒルズ』。ベルフェイス株式会社(http://hiptokyo.jp/hiptalk/easysystemsales/)と並び、最優秀賞を獲得したのが「映像解析」を使ったソリューションをワンストップで提供する株式会社フューチャースタンダードだ。同社は、店舗や不動産、電力会社、工場や倉庫など、幅広い分野へ向けて、安価かつ機能的な映像解析ツールの導入を行なっている。

代表の鳥海氏は、映像解析の分野で世界規模のプラットフォームビジネスを展開したいと語る。その大きなビジョンの背景には、どんな戦略があるのだろうか? さまざまな大企業を巻き込み推進するオープンイノベーション成功の鍵、そして今後の展望を訊ねた。


取材・文:長谷川リョー 写真:玉村敬太

新技術の開発で争うのではなく、日々どんどん生まれる技術を活用したほうが効率的で、ユーザーにもメリットがあるという戦略を取っている。

HIP編集部(以下、HIP):フューチャースタンダードは、島海さんが外資系投資銀行のトレーダーとして活躍されていた頃に立ち上げた会社だそうですね。どうして起業されたのでしょうか?

鳥海哲史氏(以下、鳥海):創業当初はトレーダーの副業として、携帯電話のカメラを使ってECサイトの服が試着できるサービスを運営していました。そうやって、カメラを使ったサービスを試行錯誤しているうちに、「映像解析」にビジネスチャンスがあるのでは? というアイデアに行き着き、資金が集まりそうなタイミングで証券会社を辞めたんです。

鳥海哲史氏(株式会社フューチャースタンダード代表取締役)

HIP:映像解析のどのような点にビジネスチャンスを感じたのでしょうか?

鳥海:それまでの映像解析サービスがすごく使いづらくて不便だったことに加え、カメラやコンピューターの小型&高性能化、映像解析の精度向上、クラウドサーバーの低価格化などが揃ったタイミングだったことです。社会の時流を読むというと大げさですが、トレーダーとしてビジネスの仮説・検証のプロセスを繰り返していた経験から「このタイミングなら事業化できる」と決断をしました。

HIP:どのようなサービスを提供されているのでしょうか?

鳥海:現在のメイン事業は、映像解析IoTプラットフォーム「SCORER(スコアラー)」です。これはカメラの設置や録画、映像データの生成、クラウドでのデータ保存、分析がワンストップで行えるサービスです。歩行者や車両、顔などの検知、年齢性別の推定など、カメラと映像解析を利用したソリューションをさまざまなユーザーのニーズに合わせて提供しています。

例えば、監視カメラのように複数のカメラを設置する場合、どこにどういうカメラが必要で、どういう役割にすれば、的確な映像解析の結果を得ることができるか? 録画された映像からどのような情報を取捨選別するのか? そんなアドバイスもさせていただいています。

さらに、Webブラウザで動く「SCORER SDK」という開発用アプリケーションも無償で提供しています。これを使えば、誰々の顔を検知したらLINEでメッセージを送るみたいなシンプルなアプリケーションを、15分くらいでつくってしまうことも可能です。

「SCORER(スコアラー)」の仕組み図。端末で得た情報をクラウド上のサーバーに送信し解析を行う。これらの操作は専用アプリを通じて簡単に行うことができる

HIP:カメラから映像解析サーバーまで、かなり幅広い技術を要するサービスのように感じますが、すべて自社で開発されているのでしょうか?

鳥海:サービスに必要なハードウェアは、基本的にすべて汎用品で構成されています。なので、ソリューションに必要なカメラや小型コンピューターの販売代行などはさせていただいていますが、私たち自身はそれらをつなぐソフトウェアの開発に特化しているんです。

またソフトウェアといっても、映像解析の技術そのものをつくっているわけではありません。新しい技術は日々どんどん生まれてくるので、そこで争うのではなく、すでにある技術を活用したほうが効率的だし、ユーザーにとってもメリットがあるんじゃないかという戦略を取っているんです。

Googleさんはもちろん、オムロンさんやNECさんなど、ディープラーニングの世界で世界的に上位にランキングされる企業の技術もすでに「SCORER」に取り入れていて、ユーザーに使っていただけるように整えさせていただいています。これがどんどん日々増えていく感じになります。

HIP:最近はどんなニーズで使われていることが多いのでしょうか?

鳥海:企業や大学と連携しながらさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。東京大学と協同で行った不動産会社の例では、空き家物件にカメラを設置し「日当たりの良さ」を定量的に測定しました。また、別のクライアントの例では工場内での人の動きを映像で解析し、効率的な人員配置ができるようデータの提供を行いました。幅広い分野の企業からご相談をいただいています。

起業家として意識しているのは「時代に最適化する」ということです。

HIP:映像解析の技術がいろんなところで使えるようになれば、あらゆる問題解決ができるかもしれないということですね。

鳥海:はい。監視カメラのように1つのハードウェアで1つのソリューションを提供するのではなく、「SCORER」を使えばさまざまな問題解決にカメラを応用することができます。

これまでの映像解析用のカメラは高価で流動性が低く、技術とクライアントのニーズがうまくマッチしていなかったんです。「SCORER」がほかの映像解析サービスと大きく違うポイントの一つに、あえて安価で汎用的なカメラを使っていることが挙げられます。カメラを開発するハードウェアメーカーさんって、どうしても高性能な製品をつくりたがるんですよね。そうすると導入費用が大きく跳ね上がります。しかし、現在はスマートフォンのカメラでさえかなり高性能のものになってきている。安価にたくさんのカメラを導入し、誰でも映像解析を行える環境が整いつつあるんです。

HIP:最先端ではなく、汎用品のカメラ技術に目を向けて、映像解析サービスに紐づけたということですね。社会全体を俯瞰し事業を組み立てるところは、トレーダー出身というバックグラウンドを感じます。

鳥海:トレーダーで培った視点は、事業を始めた現在も活きていると感じます。起業家として意識しているのは「時代に最適化する」ということです。もちろんスティーブ・ジョブズのように技術や製品で時代を変えてしまう起業家も確かにいます。ただ、それであっても時代の動きとたまたま一致した結果起こること。私はこの先の時代を読んだうえで、ニーズのある事業を行いたいと考えています。

そういった意味では、いまは映像解析をやっていますが、必要とされる技術が変わっていけば、将来はレーザーを使った3次元認識サービスに移っていくかもしれません。時代や基準はアップデートされ続けるので、それに合わせてポジションを変えていくのが弊社の基本的な考え方です。

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目指すは日本版ジェフ・ベゾス。映像解析のプラットフォームを構築するための戦略とは?

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