通信事業の同質化から抜け出すために。KDDIが挑む「ライフデザイン企業」への転換
渡辺和幸(KDDI株式会社 ホーム・IoTサービス企画部部長)
2017.11.22

「お客さま体験価値の提供」というキーワードのもと、「通信事業者」から「ライフデザイン企業」への変革を掲げるKDDI株式会社(以下、KDDI)。これまで主軸であった、携帯電話を中心とした通信事業の同質化が進むなか、決済・物販・エネルギー・金融サービスといった、生活に密接な関係を持つあらたな事業分野へ挑戦を始めている。

その一環として、2017年7月にスタートしたのが、ホームIoTサービス「au HOME」。ドアセンサーやネットワークカメラなどを通して自宅の状況を把握できるデバイスなどを中心にローンチされ、この11月には「Google アシスタント」や「Google HOME」への対応など、新しい施策も続々発表されている。

ここ数年、ビジネス界のトレンドワードでもあるIoT分野への挑戦について「通信事業者だからこそできることがある」と語るKDDIのホーム・IoTサービス企画部部長・渡辺和幸氏にその戦略を聞いた。


取材・文:市來孝人 写真:玉村敬太

大きなシェアを獲得するために、ホームIoTに参入したわけではない。

HIP編集部(以下、HIP):KDDIが2016年に発表した中期的な目標として、「通信事業者」から「ライフデザイン企業」への転換という大きなテーマが掲げられました。ここにはどのような狙いがあったのでしょうか?

渡辺和幸氏(以下、渡辺):大きな考え方としては、「お客さまの体験価値」というキーワードがもとになっています。通信事業において、価格や質といった点で差別化が難しくなってきているなか、企業として次のステップに進むためには、お客さまの目線に基づいた豊かな体験価値を提供していかなくてはならない、ということですね。

そのための具体的な施策として、通信以外のサービス、たとえば銀行や保険、ECなどを段階的に強化していく、という方針が掲げられました。「au HOME」をはじめとしたIoT事業も、その延長線上にあります。

HIP:近年、家電メーカーや住宅機器メーカーをはじめ、さまざまな企業がホームIoT市場に参入しています。いまのうちに参入すれば、大きなシェアを獲得できるかもしれない、という考えもあったのでしょうか?

渡辺:いえ、われわれはかなり後発の部類に入りますし、そもそも現在のIoT市場は、シェア争いをする段階ではないと考えています。日本でホームIoTを日常的に使っている家は、まだ1パーセントにも満たないでしょう。この数字が20、30パーセントになってくれば、「だれが覇権を握るのか」という話になってくるとは思いますが、いまは市場を広げていくことが重要課題だと思っています。

HIP:「覇権を握る」のではなく「市場を広げる」ことを念頭に置くと、ライバルとの関係性や戦い方もかなり変わりそうですね。

渡辺:そうですね。現段階では、ホームIoT市場に参入しているほかの企業がライバルである、という考えすら持っていません。ホームIoTでどんなことができるかをご存知ない方がまだ圧倒的に多いですし、仮に知っていても「めんどくさそう」と思っている方が多いはず。市場を育て、認知してもらうためには、各企業が手を取り合っていかなければならないと考えています。

違うメーカー同士のデバイスを通信事業者が横につなぐことができれば、ホームIoTが普及するチャンスはある。

HIP:多くの企業が参入し、「ホームIoT」「スマートホーム」という言葉がトレンドのようにメディアを賑わしているにもかかわらず、爆発的な普及に至っていない現状には、どのような課題があるとお考えですか?

渡辺:個人的にそういったデバイスが好きなので、「au HOME」に携わる以前からよく使っていたのですが、いまのままでは普及させるのは難しいだろうな、ということは感じていました。というのも、これまでのIoTサービスには「横のつながり」というものがなかったんですよね。

たとえば、私はダイエットを目的に自転車に乗っているのですが、スマートウォッチに記録される「何キロ走ったか」「何カロリー消費したか」という情報と、体重計に記録されている「この1か月間の体重変動」という情報を連動させることが簡単にはできない。でも、ユーザーがIoTに求めているのは、「何キロ走ったときは何グラム減っている」という情報だと思うんです。

KDDI株式会社 ホーム・IoTサービス企画部 部長 渡辺和幸

HIP:たしかに。モノをインターネットにつないでデータを記録できるにもかかわらず、そのデータ同士を連動できないのでは、価値が半減してしまいます。

渡辺:現在のところ、同じメーカーのデバイスであれば連携できるのですが、家電を1つのメーカーで揃えているユーザーというのは少ないですよね(笑)。とはいえ、別々のメーカーのデバイス同士に連携を求めるには、さまざまな障壁がある。

ですから、われわれのような通信企業がそこに参入し、デバイスを横でつないでいくことができれば、ホームIoTを普及させるお手伝いができるのではないかと思っていました。

スマートフォンを例にあげても、われわれは、iPhoneであれ、Androidであれ、お客さまに喜んでいただけるものを各メーカーからきちんとラインアップして、そのなかから選んでいただくという方法をとってきました。こういった考え方は、きわめて「通信事業者的」と言いますか、メーカーさんとは大きく異なる部分かもしれませんね。

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「au HOME」に携わることになった最新ガジェット好きの渡辺氏が、最初に打った一手とは?

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