無謀なテーマが生んだ世界初の家電。「ランドロイド」開発の舞台裏
阪根信一(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長)
2018.04.26

品質保証しながら製品を量産することは、ベンチャーにとっては非常にハードルが高い。

HIP:歴史の浅いベンチャーにはない大企業の強みやノウハウとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

阪根:たとえばパナソニックさんに関していえば、研究開発の段階から製品化および量産化に移っていくときに必須のノウハウを持っていらっしゃいます。品質をチェックしながらの開発計画という面でも圧倒的な蓄積があるんですね。

ある部品の耐久性の問題が開発途中でわかったとします。そうなると、その部品を取り換えればいいというわけではなく、まわりの構造から電気制御の仕方まで、大きく影響を受けてしまうんですね。

そういうとき、パナソニックの社員の方は、先を見越して、この部品の耐久評価はここまでに行っておかなければいけない、という綿密な計画を立ててくれるのですが、これには本当に驚きました。ベンチャーにとっては致命的になってしまう市場でのリコールも、こうやって商品の信頼性を高めていくことで未然に防ぐわけです。

HIP:たしかに、これまで数多くの製品を開発してきた大企業ならではのノウハウですね。

阪根:また、量産化においても、大企業の製造ラインは、われわれとはケタ違いの規模、精度なんですね。セブンドリーマーズでもこれまで、カーボンゴルフシャフトや、快眠をサポートする鼻腔挿入デバイス「ナステント」といった製品を開発、製造してきましたが、部品数がそれほど多いわけではありませんでした。

自動車とまではいかないまでも、部品数の多い家電製品を開発し、品質保証しながら量産するというのは、ベンチャーにとっては非常に難しいと感じていたので、大手メーカーさんの製造ラインや開発体制における知見は、「ランドロイド」開発においても重要でしたね。

ベンチャーは「スピード感がある」と言われますが、大企業ならではのスピーディーさを実感することも多かった。

HIP:実際に協働をはじめてみて、セブンドリーマーズとパナソニック、大和ハウス工業のあいだで、発見や学び合いというようなものはあったのでしょうか。

阪根:パナソニックさんからも大和ハウス工業さんからも、エンジニアを含めて複数の社員の方に来ていただいて、われわれのエンジニアと一緒に開発に取り組んでいただいています。ぼくらからすると正直、教えてもらってばっかりで恐縮しきりなのですが(笑)。

それでも、先方から「すごく勉強になっている」とおっしゃっていただけることはあるんです。もちろん協働するコアの部分は、「ランドロイド」という、いままでにない製品で世の中に風穴を開け、新たに大きなマーケットを創造できるということです。他方で、協働の副次的な効果として、ベンチャーだからこその突破力を肌で感じられることが重要だとおっしゃられるんですね。

HIP:ベンチャーの「突破力」ですか。「スピード感」などではなく?

阪根:スピード感に関しては、ベンチャーと大企業のギャップは感じません。むしろ先ほどの製品化への計画と進捗といった面では、われわれが最速で動いているつもりでも、大企業さんのスピーディーさを実感することのほうが多いんです。

では、なぜ「突破力」をぼくらに感じていただけるのか。それは、逆境に陥ったときのことではないか、と自覚しています。たとえば数か月やりとりをして細部を詰めていた部品メーカーさんから、突然「この仕事は受けられません」というお話をいただいてしまうこともあるわけです。理由は詳しく申し上げにくいのですが、規模の小さいベンチャーでは、こんなことはいっぱいあります(笑)。

HIP:なかなかに厳しい話ですね。

阪根:もちろん頭を抱えてしまうわけですが、だからといってへこんでもいられない。しょうがないと割り切って、すぐに違うやり方を考えていかなければなりません。なぜなら、ぼくらのようなベンチャーは、目の前のプロジェクトが失敗したら潰れてしまう可能性すらある。つまり、自身の命が懸かっているんです。その「蘇り感」がすごいと、協働している方々から何度か言っていただいたことがありますね。「本当にへこたれませんね……」と(笑)。

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突破力を武器に無茶なテーマにチャレンジするベンチャーと、それを加速する大企業の協働はひとつの勝ちパターン