遠山正道、林千晶が2017年に注目する人とは? 『HIP Fireside Chat』後編
遠山正道(株式会社スマイルズ 代表)/藤村龍至(建築家)/林千晶(株式会社ロフトワーク 代表取締役 / MITメディアラボ 所長補佐)/伊藤亜紗(美学研究者)
2017.03.27

2017年、年明け第1弾の新年会イベントとして開催された『HIP Fireside Chat 2017』。Fireside Chat(ファイヤーサイド・チャット)とは、日本語で「炉辺談話」と翻訳され、自宅で暖炉を囲むように落ち着いた気分で楽しむ会話のこと。イベントでは、さまざまな分野で活躍する登壇者に、いま注目すべきゲストを1人ずつ招いていただき、暖炉を模したセットを囲んでコーヒーを飲みながら、それぞれの活動、2017年の展望を語ってもらった。

後編となる今回は、遠山正道氏(株式会社スマイルズ 代表)、林千晶氏(株式会社ロフトワーク 代表取締役 / MITメディアラボ 所長補佐)のファイヤーサイド・チャットの内容に加え、すべての登壇者8名がステージ上で2017年のチャレンジを発表したラップアップの様子も合わせてお届けする。

構成:長谷川リョー 撮影:御厨慎一郎

遠山正道(スマイルズ)×藤村龍至(建築家) 民主主義的な建築のアプローチ

「世の中の体温をあげる」をコンセプトに掲げ、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」やセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」などの事業を展開する株式会社スマイルズ。代表を務める遠山正道氏が壇上に呼んだのは建築家・東京藝術大学建築科准教授である藤村龍至氏。遠山氏は「建築や都市を語らせたら彼の右に出る人はいない。シャイなSF作家、筒井康隆のような人物」と独自の言い回しで藤村氏を評した。

遠山正道氏(左)、藤村龍至氏(右)

遠山:藤村さんがふだん取り組んでいる、ユニークな建築プロセスに関心を持っています。1980年代など、少し前の時代の建築家たちは、自分の建築を作品として、関係する住民に押しつけていたようにも感じるのですが、藤村さんは地元の人たちの意見を吸い上げながら、じっくりと建築模型を作っていくプロセスを採られていますよね。言ってみれば建築のビッグデータ化というか、アノニマス化というか。民主主義的な建築のアプローチだと思いました。

遠山正道氏

藤村:住民のみなさんの意見はデータのようなものだと思っていまして、自分の理想とする建築の姿を模型や資料を見せながら伝え、都度キャッチボールをしながら調整していきます。当然、住民の方からはさまざまな意見が出てくるわけですが、複数あった意見を統合させるなど、整理していくんです。いまは埼玉県でプロジェクトを行うことが多いのですが、たとえば鶴ヶ島市というところでは養命酒さんの工場跡地に環境教育施設を作りました。ほかにも「大宮駅東口おもてなし公共スペース」というものがありますが、これも地元の人たちと議論をしながら作ったんです。

遠山:こういった作り方は、いままでの建築にはなかったアプローチと言えるのでしょうか?

藤村:建築における権力のあり方が変わったという言い方ができるかもしれません。以前は施工者や建築家側に力が片寄っている時期がありましたが、いまはどちらかといえば市民や住民側に移ってきています。「住民が決めた」というプロセスが必要になってきているので、建築が主体を消して透明になっていくような感覚が求められるんじゃないでしょうか。

遠山:いまニュータウンが限界集落化しており、高齢化や介護、空き家といったさまざまな問題を抱えているように見受けられます。これは日本全体が抱える問題にも似ている気がするのですが、藤村さんは現状をどう考えていますか?

藤村:埼玉に100くらいあるニュータウンの高齢化率を調べていくと、すごい結果が出ています。埼玉全体のニュータウンの高齢化率は40%前後で、鳩山ニュータウンにいたっては50%に近づきつつあります。世界的に21%を超えると超高齢化社会と言われているので、それを遥かに超える数字です。

老年化指数(0~14歳人口に対する65歳以上人口の比率)のデータを見ても、14歳以下1人に対して65歳以上が8.4人という数字になっています。でも、まだニュータウンに住んでいるのは65歳くらいの前期高齢者。あと10年以内に若い世代を呼び込むなどの手を打てば、これ以上の高年齢化は食い止めることができます。これを私たちは「運命の10年」と呼んでいます。

遠山:解決のためにはもう一度デベロッパーに取り仕切ってもらうとか?

藤村:そういう作戦もあるでしょうし、行政に出てきてもらうケースもあると思います。とはいえ、問題解決にいちばん近いのは住民なので、彼らが主体的に動き始める必要があります。ニュータウンは、住民のコミュニティーが空洞化し始めているところが多いのですが、もう一度場を作って、ちょっとずつ暖めていくことをやっています。デベロッパーや行政が下手に町おこしをするよりも、住民のためのコミュニティーカフェを作ることのほうが大事なのではないかと思うんです。些細な投資ですが、こうした種を少しずつ蒔くことで変わっていくと信じて取り組んでいます。

藤村龍至氏

遠山:私は藤村さんのことを「建築界の湯葉名人」と呼びたいなと思います。土鍋という都市や集落があり、そこに大豆という人や問題がある。そこに藤村という火を灯すと人知れず、膜のようなものが浮いてくる。さっとすくい上げて、ちょっと冷やして、ワサビをつけると美味しい。建築界の湯葉名人ということで、ありがとうございました。

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アート領域も手がける経営者、ロフトワーク代表・林千晶氏が招いたのは、ベストセラー『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の著者

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