INTERVIEW
津田大介、南條史生、若林恵が注目する人とは? 『HIP Fireside Chat』中編
津田大介(ジャーナリスト / メディアアクティビスト)/安部敏樹(社会活動家)/南條 史生(森美術館館長)/落合陽一(メディアアーティスト)/若林恵(WIRED日本版 編集長)/小原一真(フォトジャーナリスト)

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2017.03.23

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南條史生(森美術館館長)×落合陽一(メディアアーティスト) テクノロジーとアートで人に魔法をかけたい

トークセッションの中盤を盛り上げたのが森美術館館長・南條史生氏。自身が総合ディレクターを務めた地方アートフェスティバル『KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭』で中心的な役割を果たしたメディアアーティスト・落合陽一氏をゲストとして呼んだ。南條氏は、落合氏を「面白い発想を起点に、特定のテクノロジーに溺れることなく新しい表現を生み出すアーティスト」として評する。冒頭、落合氏は『茨城県北芸術祭』に出展したアーカイブ映像を放映しながら、自身のアート作品について解説した。

南條史生氏(左)、落合陽一氏(右)

落合:『茨城県北芸術祭』ではインスタレーションを展示しました。これは、立体物を環境に入れていく空間表現なのですが、そのロケーションに茨城県内の廃校を使えたのが面白かったです。使われなくなってからまだ日が浅い学校だったので、どことなくまだそこに人がいるような感じがするというか。

ぼくの作品はいろんな環境にメディア装置をアジャストしていくものが多いんです。たとえば、『コロイドディスプレイ』(2012年 / 2016年)はシャボン玉の表面の膜を高速振動させてスクリーンを作り出し、映像を映す作品です。

『コロイドディスプレイ』(2016年)

テクノロジーアートは、展示のためにあらかじめ環境が整った屋内に展示されることが多いのですが、このときは環境が整っていない廃校で作品を展示できるのが楽しかったです。窓が大きくて日光が射しまくる教室のような、展示には厳しい環境でも、反射分布を変えることでうまく対処しました。

落合陽一氏

『茨城県北芸術祭』で、落合氏が一つのチャレンジだったと語るのは、『幽体の囁き』(2016年)という作品で、廃校に漂う独特の情念のような雰囲気を意図的に再現したことだという。この作品は、超指向性スピーカーで校庭に設置された学習机の周りのある箇所にだけ、40m先に離れた校舎の上方部から教室の活気を再現した音声を飛ばし、誰もいない空間なのにまるでそこに生徒たちが行き交っているような空間を体験することができるというもの。

『幽体の囁き』(2016年)

『茨城県北芸術祭』に展示された別の新作では、建築家の妹島和世氏とコラボレーションを行った落合氏。その作品は『Spring』(2016年)という名前のとおり、入浴も可能な足湯施設として、穏やかな風景のなかに設置されている。落合氏はその作品に川のせせらぎが聞こえるサウンドアートの仕掛けを施した。

落合:じつは温泉を作るのが夢の一つだったので、あの作品は嬉しかったです。このように展示室ではない空間でも、身体性に訴えかけるようなテクノロジーアートを表現できるのか、もっと追求していきたいです。ぼくは「人に魔法をかけたい」というのが目標の一つなんで。

南條:ヨーロッパの歴史を振り返ると、昔は魔法と錬金術、アーティストと科学者は一体化していたんですよね。そこから分化していったわけです。もとをたどると原点は1つなので、落合さんの作品を観ていると、そんな人類の歴史に通じる面白さを感じます。

南條史生氏

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