新時代のリーダーが語る、いま求められるワークスタイルとは『HIP Conference vol.6』
麻野耕司氏(株式会社リンクアンドモチベーション執行役員)/小泉文明氏(株式会社メルカリ取締役)/渡邊千洋氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員 企画統括室長)/ピョートル・フェリークス・グジバチ氏(プロノイア・グループ株式会社代表取締役) /谷本美穂氏(GEジャパン人事部長)/竹下隆一郎(ハフィントンポスト日本版編集長)/岡島悦子(株式会社プロノバ 代表取締役社長)/佐々木紀彦(株式会社ニューズピックス 取締役 NewsPicks編集長)
2017.02.08

第6回『HIP Conference』テーマは、「最先端企業から学ぶ『新時代のワークスタイル』~いま求められる働き方とリーダーのカタチ~」。

セッションⅠには日本発のユニコーン企業(1,000億円超の未公開企業)として注目を浴びるメルカリから小泉文明氏が登壇。個人と企業の生産性・創造性の向上を図る「働き方改革」を昨年より推進してきたリクルートマーケティングパートナーズの渡邊千洋氏と共に、両社が実践するワークスタイルと人事戦略を語った。

続くセッションⅡでは、世界のワークスタイル、リーダー育成の最新事例を学ぶ。Googleやモルガン・スタンレーでの人材開発に携わってきた、ピョートル・グジバチ氏と、GEジャパン人事部長・谷本美穂氏が登壇。不確実性が高まる世界のなかで、新旧グローバル大企業が採用する顧客視点重視の組織のあり方を探った。

セッション終了後のラップアップには、経営チーム強化や成長戦略分野を手がけるコンサルティング企業、プロノバ・岡島悦子氏が登壇。NewsPicks編集長・佐々木紀彦氏と共に新時代のリーダーシップ像について語り合った。日本と世界、ベンチャーから大企業、多角的な視点からディスカッションした先に見えた未来のワークスタイルとは。

構成:長谷川リョー 撮影:御厨慎一郎

従来通りの「働き方」を、国全体で問い直す時代

労働人口が減少している日本。今年、日本政府は経済成長を支えるために「働き方改革実現会議」を開き、長時間労働・残業といった慣行の是正に向け本腰を入れ始めた。

一方で、経済成長を促すイノベーションを創発するために、テクノロジーの進化は無視できない。「HR Tech」(人事関連業務にビッグデータや人工知能を活用すること)や、テレワーク導入による在宅勤務の浸透により、働き方に変化が起こりつつある。

麻野耕司氏(株式会社リンクアンドモチベーション執行役員)

「新しい価値を創造するリクルート、メルカリのワークスタイル」と題されたセッションⅠ。メルカリ取締役・小泉文明氏、リクルートマーケティングパートナーズ(以下、RMP)執行役員・企画統括室長渡邊千洋氏の二人が登壇した。

セッションは、モデレーターを務めたリンクアンドモチベーション執行役員・麻野耕司氏による「2つの変化」の指摘から始まった。

麻野:まず、企業を取り巻く環境の変化には「ソフト化」「短サイクル化」の2つがあります。「ソフト化」とは、産業全体におけるインターネット業界を含む第三次産業、つまりはソフトビジネスの比率が高まっているということです。そのようなソフトビジネスにおいて、商品を生み出すために必要なものは設備や資金ではなく、組織や人材です。経営における組織や人材の重要性はますます高まってきています。

そして、これまでは一度ヒットした商品が何十年も売上を稼ぎ続けることができましたが、いまはすぐに陳腐化してしまうという「短サイクル化」があります。そのため、これからの組織や人材は常に新しい価値を生み出し続ける必要があります。この2つの要素が合わさった結果、これからの時代においては、新しい価値を創造できる組織や人材が、ビジネスにおけるキーポイントになってきたといえます。

組織には、どんなときも社員が寄り添える一つの柱が必要

日本、アメリカ、イギリスでグローバルにフリマアプリを展開するメルカリは、サービスのローンチからわずか3年半で6,000万ダウンロードを全世界で達成しているという。しかしこうした数字からは意外かもしれないが、社員数はグローバルでカスタマーサポートを含めて350名という非常にリーンな(無駄を排除した)組織となっている。

小泉氏は、メルカリを立ち上げる以前、mixiの取締役を務めた経験を持つ。メルカリの組織戦略にミッションとバリューを据えることになったのは、その影響が大きいのだという。

小泉:以前、取締役を務めたmixiという会社は「強いプロダクトが会社の文化を作っていく」という組織でした。そこでの私の一番の失敗は、「バリューを社内に浸透させることを怠ってしまった」ということです。プロダクトが順調なときは問題がありませんが、その成長曲線が鈍くなるにつれて、バリューという会社の柱がないことで、会社には色んな不満が噴出しました。

メルカリも当然プロダクトが中心の会社ですが、私がジョインしてまず初めにやったことは「ミッションとバリューを作り直すこと」でした。企業の人事が戦略的に取り組むべきことは採用・評価・制度の前に、社員が寄り添うべき柱を建てることではないかと思います。

小泉文明氏(株式会社メルカリ取締役)

メルカリが掲げるバリューとは、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(すべては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」の3つだ。グローバルかつC2Cマーケットで勝ち抜くことを念頭に、メルカリの5〜10年後を見据えながら議論を重ねて辿り着いた軸なのだとか。

また、人事制度もプロダクト改善で用いられるABテストの要領で、性善説に基づきながら、臨機応変にチューニングしているのだという。評価制度も多くの日本企業で採用されている「MBO(Management by Objectives=目標による管理)」ではなく、GoogleやFacebookら世界のIT企業を中心に使われている「OKR(Objective and Key Result=目標と主な結果)」という評価制度を採用し、定性的な目標ではなく、数値に基づく評価を行うそうだ。

さらに今年より「merci box(メルシーボックス)」という人事制度を導入した。発表時には、「産休・育休あわせて約8か月分の給与は100%保障する」という手厚い制度の内容も話題となった。

小泉:「Go Bold(大胆にやろう)」に働けなくなった場合は、会社が生活を保障する仕組みを敷いています。妊娠・出産時をはじめ、介護時にも有給を別途付与しますし、全社員が死亡保険に入っています。

あとは妊活に関しても、自治体が3割負担している治療に対しては、会社が7割を負担しますので、実質本人の負担はゼロです。会社がちゃんと面倒をみるので「不安にならずに思い切り働いてね」ということをメッセージとして伝える人事制度になっています。

従業員全員が「働き方」を考える場を持つのは、「持続的な会社の成長」のため

「ゼクシィ」「カーセンサー」「スタディサプリ」などの、ライフイベント領域の選択支援を行うRMPは「持続的な会社の成長」を目指し、リクルートグループ全体のなかでも先進的に「働き方変革」に力を入れている。

実際にRMPで働く約1,400名の社員のうち9割が20〜30代で、男女比率も女性が6割、そのうち10%がワーキングマザーという従業員構成も特徴的だ。

渡邊:成熟したマーケットのなかで企業が持続的に成長していくためには、既存事業の生産性を少しでも高めていくことと、イノベーティブで新しい価値を創造し続けていくことが同時に求められています。そのためには単純に人が少ないから人数を増やす、時間をかけていくということではなく、社員の個を尊重しながらもイノベーションにチャレンジする時間を創出していくことが必要です。

そのために一人ひとりの従業員とミドルマネジメント、そして経営陣が三位一体となって「なぜいま働き方改革が必要なのか?」について腹に落ちるまで突き詰めて取り組んでいます。

渡邊千洋氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員 企画統括室長)

RMPでは、経営陣がリモートワーク全社導入などの施策推進や生産性を高めるためのIT環境の整備などを加速させる一方で、現場ではミドルマネジメント層全員で「働き方」に関するディスカッションを3時間×10回敢行。「なぜ、今働き方変革に取り組むのか?」という問いに対してミドルマネジメントが本気になることで、現場のメンバーの間にもチャレンジへの機運が生まれ、「全員で」働き方変革に取り組んできたことが肝要だそうだ。

そして、その成果はすでに表れ始めており、今年9月に全従業員向けに行われたアンケートでは「生産性への意識が変わった」と答えたのが全体の90%、「実際に行動に移している」と答えた割合は66%にのぼる。

セッションの最後には、麻野氏から「一人のビジネスパーソンとしてこれからの時代に求められるワークスタイル」について、小泉氏、渡邊氏それぞれに問いが投げかけられた。

小泉:メルカリでは、副業を推奨しています。それはプログラミングでも良いですし、場合によってはある会社のコンサルティングに入っても良い。副業によってアウトプットをする機会を設けることで、本人の知的インプットにつながることが大切だと考えています。

変化が早くなるこれからの時代では、インプットとアウトプットを高速に回していける人が強いと思います。ぼくら経営陣も、なるべく業務を早く終えて、個人の時間に投資するスタイルをとっています。自由度の高い組織ですが、そこは社員を信じてサポートしていく会社でありたいと思っていますし、今後はこうしたライフスタイルが求められていくのではないかと思っています。

渡邊:「新しい価値を創造する」というときに、あまり難しく考えすぎると、そこに押しつぶされてしまうかもしれません。でも、まずは難しく考えすぎずに、「今日から明日へ一歩進歩する」ということから始めてみるのが良いと思います。

そのためには常にアンテナを張りながら、多種多様な人たちとコミュニケーションをとってみるのはいかがでしょうか。RMPの従業員は、営業職が半数以上を占めます。しかし、同じ会社のなかには商品を作るメンバーがいたり、ITを支えるメンバーがいます。違う職種同士の会話を通じて、いまの仕事のヒントになるかもしれませんし、思わぬ気づきが生まれるかもしれない。今後は、少しずつ小さなイノベーションを積み重ねるような働き方が求められているのではないでしょうか。

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変化を迫られる大企業。いまの時代が求めているグローバル基準のリーダー像とは?

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