ドローンによる「空の産業革命」で、人々の生活はこう変わる。HIP conferenceレポート
齋藤精一(株式会社ライゾマティクス代表取締役 / クリエイティブ&テクニカルディレクター)
2018.03.15

空がつながることにより、さまざまな業界の構造が大きく変わる。

続いて登壇したのは、産業用ドローン開発、設計、製造、販売、修理、そして学校運営など幅広くドローン事業に取り組む株式会社エンルートの代表取締役社長、瀧川正靖氏だ。

株式会社エンルート代表取締役社長 瀧川正靖氏

瀧川正靖氏(以下、瀧川):弊社が行っているのは、測量のアプリケーション、ドローンによる調査記録を3Dデータで出力する技術、スマート農業といわれる農地の把握に役立つドローンなどの開発です。ドローンを通じた社会貢献を目的としており、働く人々をサポートしたり、自然災害に対応したりするための事業を行っております。

農薬散布用のドローンは、限られた農地内を飛んでいますので、みなさんの目に触れることは少ないかもしれません。ですが、現時点で自律飛行を実現している機体もあります。いまは「農地の高齢化を救う」などと言われることもありますが、自律飛行技術が広く普及したら就労構造がガラっと変わるだろうと。若い人や女性がスマートな農業をはじめるなど、大きく人の流れを変える可能性があると思っています。

また、消防用ドローンの開発も行っていて、1,000℃の熱のなかを飛べる機体の開発を目指しています。高熱のなかでも溶けずに、なおかつ軽いといった厳しい基準をクリアするための技術開発。ゆくゆくは火のなかを飛び、どこが火元なのかのリサーチや、消防の方々のサポートを行いたいと思っています。最終的にはドローンから消火活動を行えるのが理想ですね。

瀧川:本日のテーマである「空がつながると生活はどう変わるのか?」ですが、就労構造やビジネスモデルなど、業界の構造自体が大きく変わっていくと思います。ドローンの普及によって、3Dの地図データが蓄積されていけば、そのデータを用いてより正確な自律飛行が可能になっていきます。すると、防災や防犯、運送流通といった分野でもドローンの実用化が進んでいくでしょう。バッテリーの耐久性や、飛行の正確性といった機体の問題はまだまだありますが、現在のように限られた地域ではなく、ドローンがどこでも飛んでいる未来をハードウェアメーカーとしては期待しています。

いずれはどこからでも5分でドローンが到着するようになるかもしれません。

KDDI株式会社 商品戦略部「スマートドローンプロジェクト」を推進するプロジェクトマネージャー松木友明氏。通信会社の電波網を活かしてドローンを「つなぎ」、プラットフォームとして活用するプロジェクトを推進している。「空の産業革命」が目前にやってきていることがより現実味を帯びて感じられる内容であった。

KDDI株式会社 商品戦略部 松木友明氏

松木友明氏(以下、松木):KDDIがなぜドローンをやっているかというと、ドローンが消費者に普及したとき、通信回線を利用することによってより可能性が広がるんじゃないかと考えているからです。いずれ、ドローンは長距離を飛んで荷物を運んだり、インフラの点検を行ったりといった仕事をするようになる。そのときにLTEの通信網を利用すれば、かなりの長距離を飛ぶことができる。目視で操縦する人間がいらなくなるんですね。

KDDIが推進するスマートドローンプロジェクトのイメージ映像

松木:こうした未来を実現するためには、遠隔の運行管理システム、収集した地図のデータなどを処理するためのクラウドシステムを構築し、一般ユーザーが安全に運用できるプラットフォームをつくる必要があります。その先には、個人向けのホームセキュリティサービスなども視野に入れています。ビジネスとしてはすでにドローン保険のサービスを開始しているんです。

その後、5年後の社会について松木から、具体的なビジョンが示された。それはKDDIが保有する全国のモバイルネットワークをドローンのインフラに使用するというものだ。全国の通信ネットワークセンターを拠点に、充電、点検整備、セッティング遠隔監視が行えるようになれば、スマートドローンプロジェクトは一気に実現の可能性が高まるという。

松木:KDDIが保有する基地局が全国の32万か所あるんですが、そこをドローンポートとして活用できないかと考えています。東京の多摩の周辺にドローンをポートおきに配置したと試算すると30分以内に何処へでも行けるようになるんですね。指示した写真の撮影をしたり、災害状況を監視したりできる。ニーズが増えていけば、ポートが増え、到着時間も短くなりますし、いずれはどこからでも5分でドローンが到着するようになるかもしれません。1台だとできることも限られますが、こうしてインフラとして活用できるレベルにまで浸透させていけば可能性は広がります。こうした社会の実現に向けて実際に弊社は新潟県の長岡町で実験を進めています。

新潟で行われた実証事件の様子。

もちろんまだまだ課題も山積みです。例えば鉄道のレール点検をするにしても、しっかり検知できなければ仕事はできない。ドローン利用によって発生する電磁波が他のシステムに影響を及ぼす問題など、クリアしなければならない個別の問題を改善し、いろいろな企業さんと実証実験を続けているところです。2020年までにはある程度実現した世界をお見せしたいと思っていますね。

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ドローン社会をつくり上げるのは「技術」「ビジネス」「クリエイティブ」をつなぐ人材