INTERVIEW
ドローンによる「空の産業革命」で、人々の生活はこう変わる。HIP conferenceレポート
齋藤精一(株式会社ライゾマティクス代表取締役 / クリエイティブ&テクニカルディレクター)

INFORMATION

2018.03.15

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イノベーションコンサルティング事業を行うQuantumとHIPの共同開催で行なっている『HIP conference』。「進化するテクノロジーで、5年後のライフスタイルをどう変えたいか!」と題されたこのイベントでは、人々の生活に変革をもたらすであろうテクノロジーをとりあげ、その業界のトップランナーとともに議論を深めていく。

今回のテーマは「ドローン」。空の技術革命と呼ばれる「ドローン社会」がやってきたとき、人々のライフスタイルはどう変わっていくのだろうか? ドローンのハードウェア、ソフトウェア事業を展開し、業界の第一線で活躍する登壇者たちの刺激的なセッションの模様をレポートする。


取材・文:飯田光平 写真:玉村敬太

「空の産業革命」といわれるドローンの登場。これまで利用されてこなかった地上150mまでの空域を利用することによって、人々のライフスタイルを一新するビジネスが生まれていくことが期待される。

2015年12月に行われた改正航空法の施行以降、日本国内のドローン市場は主に商業用の開発に取り組んできた。以降好調に国内ドローン市場規模は拡大し、2016年には前年比約2倍の353億円を記録。国土交通省が発表したロードマップによると、2020年までに規制緩和が進み、2022年度には2,000億円超にまで拡大するとの見方もある。

ドローン社会のポイントとなるのは、ドローンが「つながる」ことだ。AIやビッグデータといったほかの技術、あるいは携帯電話などに利用される通信網などとつながったとき、ドローンはプラットフォームとしての価値を発揮する。

ハードウェア、ソフトウェア、通信事業、アートそれぞれの領域で活躍し、ドローン活用の可能性を広げ続けるキーマンたちが、来るべきドローン社会について語った。

ドローンも道具の一つ。あらゆるものを組み合わせることで新しい表現は生まれていく。

「テクノロジーは魔法なのか?」。まず、舞台に立った株式会社ライゾマティクスの代表取締役社長、齋藤精一氏は、聴衆にそう問いかけた。ライゾマティクスが生み出す先進技術を組み合わせて生み出す作品はときに魔法のようだと形容されることもあるそうだが、「テクノロジーはあくまで道具」と強調し、話を続けた。

株式会社ライゾマティクス代表取締役社長 齋藤精一氏

齋藤精一氏(以下、齋藤):テクノロジー、広告、エンターテイメント、行政、あらゆる業界はそれぞれ分断されていると考えられてきました。「ドローン」に関しても、それぞれの業界が縦割りに取り組んできましたが、ほんとうはすべては根底でつながっているとぼくは考えているんです。例えば、いま注目を浴びている仮想通貨もドローンと無関係なわけではないし、モビリティーや表現、文化、法律もすべてが本来はつながっている。

ライゾマティクスという会社名も地下茎を表す「リゾーム」という言葉からから命名したという。雑多で町工場的といわれることもある彼らのオフィスでは、半田ごてで基板盤を作っている人間もいればスタジオでロボットの実験をする人間もいる。それら別々の技術を持った人間が集まり、ひとつの作品が生み出される。ドローンの技術も、カメラと同じように彼らにとっては作品制作のための道具のひとつだ。ライゾマティスクスリサーチが制作したダンスカンパニーELEVENPLAYの映像に説明を加え、話を続けた。

ELEVENPLAY x Rhizomatiks Research 『3 dancers and 24 drones』

齋藤:ドローンは便利なだけのものではないんですよね。ドローンと映像、そこに音楽、身体表現というものが掛け合わさることで、いままで見たことのないようなものが生まれてくるんです。

ドローンをプログラミングして、さまざまな役割を担わせるというのは、国内外のいろんなエンジニアがやってきたこと。それ自体はぼくにできないことですが、ぼくはそれを使って表現を考える。テクノロジーの新たな使い方が生まれたときこそ、その技術は世間に広がりを見せ、理解が広まっていくと思っています。

商業施設の開発からエンターテイメント、ライブエンターテイメント、広告などライゾマティクスの活動は多岐に渡っている。分野を越境し、新たな表現を切り開くクリエイションの根底には奥底であらゆるものがつながっているという非分離主義の考えがあると説明し、プレゼンテーションを終えた。

ドローンが異なる技術へのアプローチを行うことで、新たな市場が生みだされていく。

続いて登壇したのは株式会社ORSO 代表取締役社長 坂本義親氏。ソフトウェア企業代表の視点から語られたのは、飛んでいるドローンを使うことによって何が起きるのかということだ。「これできるかも」という柔軟かつ自由な発想が未来をつくるのだという持論を展開した。

株式会社ORSO 代表取締役社長 坂本義親氏

坂本義親(以下、坂本):はじめてドローン見たとき、これはすごいなと驚いたんです。空を飛び、綺麗な映像が撮れる。これはもっといろんなことができるんじゃないかと。いまは安価なものだと数万円から、4Kの動画が撮影できる高性能なものでも10万円で買える時代になってきた。

これまで映画撮影などで数百万円かけなければ得ることができなかった技術を、一般の方でも簡単に手にすることができる。それぐらい技術革新が進んでいるんですね。そしてこれらの技術が普及すると、重要になってくるのはその「使い方」ではないかと思います。高級車メーカーで知られる、ロールス・ロイス社が製作した、ぼくの大好きなコンセプト動画がドローンの未来を示唆するものだったので簡単に紹介します。

2016年にロールス・ロイス社が発表したムービー「Rolls-Royce future shore control centre」

この動画のなかでは、陸上にあるコントロールセンターから、遠隔で船舶の運航管理を行う様子がムービーのなかで描かれています。そのなかにドローンも登場するんですね。中央管理室のオペレーターが貨物船に異常が発生したのを察知するなり、すぐにドローンを飛ばし、どこに異常があるのかを搭載されたカメラやセンサーを操って、発見しようとするんですよ。ここでは、オペレーターの眼球の動きをトラッキングすることができるソフトウェアを活用してドローンの操作が行われています。

これはいわば身体拡張としてのドローンといえますよね。人間がその場所にいかなくても、装置を活用できる環境を整えておけば、遠隔でいろんな情報を即座に収集することができる。こんな時代は意外と早く実現できるんじゃないかと思っていまして。斎藤さんが「他分野との掛け合わせがキーワードになる」とおっしゃっていましたが、このようにドローンがまったく異なる技術と組み合わさることによって、新たな市場が生みだされていくでしょう。ぼく自身、ソフトウェア事業でこうした新しい事例をつくっていきたいと思っています。

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