INTERVIEW
リーグ売上10倍増。Bリーグを牽引する葦原一正氏が挑戦する日本スポーツビジネス革命
葦原一正(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事・事務局長)

INFORMATION

2017.06.07

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今、「Bリーグ」がアツい。2016年9月、超満員で開幕を迎えた男子プロバスケットボールリーグ、「B.LEAGUE」だ。一時は日本男子バスケット界の先行きが危ぶまれるニュースが多い時期もあったのだが、Bリーグはそれらの問題点を克服し、スタイリッシュなイメージのプロリーグヘと新たに生まれ変わった。2017年5月27日、Bリーグ チャンピオンシップ ファイナルを終え、初年度動員225万7395人との発表があった。翌シーズンへの期待はますます高まっている。

そのBリーグの盛り上げの中心にいる人物が、Bリーグ事務局長の葦原一正氏。外資系コンサルティング会社やプロ野球チームの幹部を経験したのち、Bリーグに活躍の舞台を移した。デジタルマーケティングの活用により一大産業として成長したアメリカのNBA(National Basketball Association)をベンチマークに、バスケットボール界を大きな市場に育て上げようとしている。

新たなファンの獲得のために葦原氏が仕掛ける施策とは? そして、デジタルマーケティングが日本のスポーツビジネスをどう変えていくのか? Bリーグが初めて迎えたシーズンの最中(※)、改革のキーマンに話を聞いた。

(※)本取材は2017年2月に行われた

日本のスポーツ界全体にはリスペクトを抱きつつ、新しいモデルを提示したい、というのが個人の思いです。

HIP編集部(以下HIP): 新しいプロリーグの門出ということでビジネス面でも注目を集めているBリーグですが、開幕からこれまでを振り返って、手ごたえはいかがですか?

葦原一正氏(以下葦原):滑り出しは非常に良かったと思っています。具体的な実績を3つの数字からお伝えすると、まず入場者数は、昨シーズンの体制ではおおよそ100万人で、今シーズンの最終的な予想が150万人前後。だいたい1.5倍に増えています。これはスポーツビジネスの世界だとなかなか例を見ない、動員増加としては大きな伸び率なんです。

公益社団法人Bリーグ 葦原一正氏

葦原:2つ目としては、スポンサー契約や放映権といったリーグ全体の売上が昨季の約10倍になったこと。そして3つ目が、認知度が2016年10月に約65%に達し、2015年に比べて20%以上も上昇したことですね。良い数字だとは思いますが、一方でまだまだこれからが勝負だと思っています。

HIP:プロ野球(90%)、Jリーグ(87%)に続く認知度ですね。認知が高まった要因としてなにが大きかったと思いますか。

葦原:やはり開幕戦の効果は大きかったかもしれませんね。演出に力を入れて、生中継に関してもスポナビライブ(ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社が共同運営する動画配信サービス)でのストリーミング配信はもちろん、フジテレビでの地上波と、NHK-BS1でも放送いただきました。インターネットでも話題になっていて、本当に良かった。

HIP:開幕戦では、全面LEDコートを用いたきらびやかな演出が話題を呼びましたね。ネットでの話題と言えば、アルバルク東京所属のザック・バランスキー選手の名前がユニーク(ざっくばらん)だということで、Yahoo!ニュースでも取り上げられました。

LEDコート。歴史的な一戦となった開幕戦

葦原:ザック選手などを含め、ネットで話題が拡散されたことに加えてもう一つ、Bリーグが認知されつつあると感じるのが、報道におけるあり方なんですね。以前はBリーグの前に必ず「日本バスケの新しい男子リーグ」といった枕詞がついていたんですが、いまでは「Bリーグ」とだけ表記してくださるメディアさんが増えてきていて。少しずつ認識が変わってきたな、と。

HIP:着実に、「Bリーグ」の名前が浸透してきている表れですね。デジタルマーケティング戦略についても教えていただけますか?

葦原:リーグの立ち上げ段階から絶対にやらなければいけないと主張し続けてきたことが2つあり、その1つがデジタルマーケティングの徹底推進でした。ちなみに、これはのちほど触れますが、改革のコアとなる2つ目の要素が、日本代表・Bリーグ・クラブの権益統合。これらはブレずに言い続けていますね。

HIP:なぜ、この2つを改革の柱にされたのでしょうか?

葦原:それはこの2つが、「日本のスポーツ界全体で実現できていないこと」だからです。たとえば、アメリカのMLBでは、1995年の市場規模が約1,500~2,000億円だったんですが、いまでは1兆円を超えるまでに成長している。では彼らが何をやってきたのかというと、オンラインチケット、デジタルコンテンツ販売などのデジタルマーケティングでファンのニーズを掴みながら、リーグ全体の運営を強化しているんですね。

日本のスポーツ界全体にはリスペクトを抱きつつ、MLB、NBA のような収益構造を日本にも提示したい、というのがぼく個人の思いです。

コアなバスケファンに訴えかけることが新規ファン獲得の秘訣。Bリーグが動員数を増やすためにとった意外な施策とは?

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